レーザー干渉計は、光の干渉現象を応用し、ナノメートル単位の変位や距離を高精度に測定できる装置です。現在では、半導体製造、精密動作、天文学、重力波観測など、さまざまな分野で広く活用されています。

本記事では、レーザー干渉計の原理や構造、応用例に加え、当社製品「A0020A レーザー線幅測定システム」「A0040A 光雑音アナライザ」「A0070A 光周波数アナライザ」を活用した高精度レーザー測定の事例についてもご紹介します。

目次

レーザー干渉計(Laser Interferometer)とは?

レーザー干渉計は、波長の近接した2つのレーザー光が結合された際に生じる「干渉縞(interference pattern)」を解析し、変位などを測定する装置です。この干渉縞の状態は光の波長に対応しており、ナノメートルレベルの変位といった非常に微細な検出が可能です。一般的には、同一のレーザー光を分割し、再結合させる構造が採用されます。

レーザー干渉計の歴史と発展

干渉計の起源は19世紀にさかのぼります。19世紀にアルバート・マイケルソンが発明した最も一般的な、干渉法用光学機器「マイケルソン干渉計」(Michelson interferometer)の登場がその始まりです。マイケルソンとエドワード・モーリーは、この干渉計を用いて有名なマイケルソン・モーリーの実験(1887年)を実施し、光速がさまざまな慣性系において一定であることを示し、エーテル理論を否定しました。

やがて、半導体レーザーやファイバーレーザーなどが光源として用いられるようになると、レーザー光の波長の安定性の向上とともに、計測の精度や再現性も飛躍的に向上しました。近年では、米国のLIGO(ライゴ)などの重力波検出装置にもレーザー干渉計が導入され、光干渉技術の応用範囲はさらに広がっています。

参考資料:

干渉計の原理と式の理解

レーザー干渉計の測定原理

干渉計では、基準光と反射光の光路差により生じる位相差をもとに、対象の変位や距離を計算します。この位相差は波長の整数倍や分数倍として現れるため、光の波長が精度の基準になります。したがって、使用するレーザーの波長や安定性は、干渉計の精度に大きく影響します。

位相差と波長の数式

位相差は、光波が進む距離や経路の違いによって生じる現象で、干渉計の測定精度を左右します。位相差 Δφ は、波長 λ と光路差 ΔL によって決まり、次のような式で表されます。

Δφ = (2π / λ) × ΔL

ここで、Δφの単位はラジアンであり、λ は光の波長、ΔL は2つの光の経路長の差です。この式により、対象物の変位量を高精度に導き出すことが可能になります。

ただし、変位量を正確に導くためには、レーザー波長の安定性、反射率、光源の直線性など複数の要素が影響するため、それらも適切に管理する必要があります。

高精度測定を可能にする要素

高精度な測定を行うには、外部環境の影響をできる限り排除する必要があります。たとえば、温度変化や振動、光路の媒質の屈折率の変化、光学部品の反射率の違いなどが、測定に影響を与える可能性があります。こうした外乱を最小限に抑えるための設計や環境管理が、安定した高精度測定を支える鍵となります。

レーザー干渉計のシステム構成

一般的なレーザー干渉計システムは、レーザー光源、光スプリッター、ミラー、受光素子(フォトディテクタ)などから構成されます。反射された光を干渉させ、受光素子で変化を検出し、その結果を信号処理によって数値化します。

干渉計の主なコンポーネントには、以下のような役割があります。

  • レーザー光源:安定した波長のレーザ光を生成
  • 光スプリッター:レーザー光を2つの光路に分割あるいは結合
  • ミラー:レーザー光を反射することにより光路の方向を設定
  • 受光素子(フォトディテクタ):干渉したレーザー光を電気信号に変換

レーザー干渉計の応用と利点

活躍する場面はどこ?

レーザー干渉計は、ナノメートル単位の変位検出を可能にするため、高精度位置決めや微細加工の分野で広く使われています。非接触かつ高応答性を持つため、装置のフィードバック制御やモーション制御にも最適です。

応用分野は多岐にわたりますが、例えば、半導体製造装置のステージ位置制御、光通信機器のモジュール検査、天文望遠鏡のミラー調整などがあります。

また、干渉計の距離を固定することにより、レーザーの光周波数や光位相の変動を検出することができます。光の位相変調を用いた通信では、干渉計は重要な役割を担います。

他の計測システムとの違い

接触式測定、ToF測定、電気式変位センサ、カメラ式計測など各種の測定手法と比較すると、レーザー干渉計は一般に高い分解能や良好な再現性・安定性が期待できる測定方式の一つとされています。

特に位置や距離の僅かな変異の把握が求められる工程では、レーザー干渉計は高精度測定を実現しやすい手法として利用されています。装置全体の制御系においても、測定系との親和性が高く、応用の幅が広いのも特徴です。

レーザー干渉計の製造メーカー・関連製品紹介

レーザー干渉計を開発・提供する国内外の主要メーカーとしては、SYCATUS(シカタス)、ZYGO(ザイゴ)、Renishaw(レニショー)、キーエンス、Keysight(キーサイト) などがあり、それぞれ異なる特長を持つ製品を展開しています。

SYCATUS(シカタス)の「レーザー線幅測定システム」

SYCATUS(シカタス)は、精密な光測定を可能にする先進的な技術を提供しています。

SYCATUSのA0020A レーザー線幅測定システムは、従来の遅延干渉計方式を採用したレーザーの線幅評価のための計測システムです。レーザーの線幅評価は、光通信用レーザーの開発、製造、品質管理に不可欠です。

また、A0040A 光雑音アナライザは、特殊な干渉計を用いて、レーザーの線幅を光周波数雑音電力密度として解析することを可能とした、先進的な測定システムです。

さらに、A0070A 光周波数アナライザは、A0040Aと同様の干渉計を用いて、FMCW LiDARなどに用いられるレーザーの光周波数変調を、時間軸上でオシロスコープのようなリアルタイム測定を提供する画期的なシステムです。

これらの製品は、高感度・低ノイズの光テストセット、Keysight Technologies(キーサイト・テクノロジー)社のシグナル・アナライザを組み合わせることで、高い確度の測定を簡単に実施することができます。

製品ページ:

関連ブログ:光測定における基礎知識:「レーザー線幅」とは何か?

ZYGOの「レーザー干渉計」

ZYGOは、精密光学測定のパイオニアとして知られ、特に光学コーティングの厚み測定において高い評価を受けています。

ZYGOのレーザー干渉計は、半導体やリソグラフィから人工衛星用画像システム、最先端の消費者向け電子製品、防衛用赤外線(IR)および熱画像システム、眼科医療機器に至るまで、業界で最も要求の厳しい測定アプリケーションの実現を支援しています。

ZYGOは、中空間周波数特性の評価用に開発された最高解像度の干渉計を含む、幅広いラインナップの干渉計を提供しています。また、製造用コスト効率の高い装置や、過酷な環境向けに最適化された装置もラインナップしています。

製品ページ:レーザー干渉計|ZYGO

Renishaw(レニショー)の「RLE 光ファイバレーザー」

Renishaw(レニショー)は工学と科学技術分野で世界有数の企業であり、高精度測定技術とヘルスケアに特化しています。

Renishaw(レニショー)は、大規模な航空宇宙センターから、高精度半導体産業のOEM機械メーカーまで、多様な干渉式レーザーエンコーダーを提供しています。例えば、レニショーのRLE 光ファイバーレーザーは、位置決めフィードバック用に特別に開発された最先端のホモダインレーザー干渉計システムで、Renishaw(レニショー)が独自に開発したものです。

参照:

キーエンスの「レーザ変位計」

キーエンスは、工場自動化(FA)機器の総合メーカーです。1974年の設立以来、新たな価値の創造を継続し、現在ではFAセンサーを含む高付加価値製品が、自動車、半導体、電気機器、通信、機械、化学、医薬品、食品など、幅広い業界で活用されています。キーエンスは、46カ国に250の拠点を展開し、世界中の35万社の製造現場に貢献しています。

キーエンスが提供している1次元レーザー変位計は、主に2つのタイプに分類されます。一つは、発光と受光に同軸のレーザー光を使用する『共焦点方式』、もう一つは、投光した反射光を受光する光路が三角形を形成する『三角測距方式』です。アプリケーション、ワークピースの材質、および設置距離などに応じて、高さ、厚さ、幅などの寸法を測定するための最適なレーザー変位計を選択できます。

企業・製品ページ:

キーサイトの「レーザー干渉計と校正システム」

キーサイト・テクノロジーは、レーザー干渉計およびレーザー校正システム、高度な電子測定システム、高精度光学部品、複合モノリシック光学(CMO)、および最も厳しい測定アプリケーション向けの光電子工学システムの開発と製造において、世界的なリーダーです。

キーサイトのレーザー干渉計とレーザー校正システムは、広範なダイナミックレンジにおける高精度、複数の自由度での位置測定機能、および空気中と真空システムの両方で利用可能な最高精度を提供しています。

参照:レーザー干渉計と校正システム|Keysight Technologies

【事例紹介】SYCATUS(シカタス)製品による高精度測定の実績

① A0020A レーザー線幅測定システム

SYCATUSのA0020A レーザー線幅測定システムは、レーザーダイオードの線幅を測定するための簡単で正確な測定システムです。Keysight社のシグナル・アナライザと組み合わせることで簡単かつ安定に測定できます。

主な機能

  • 最大40kHzまでのレーザー線幅測定
  • C/Lバンドで広範な波長範囲に対応
  • 干渉計と光受光器を一体型筐体に統合

導入事例

通信用半導体レーザー製造メーカー様:「レーザーの品質管理に好適」
レーザーチップの品質管理の一環として線幅測定を実施していますが、A0020A レーザー線幅測定システムは、安定かつ簡単に測定できるため、品質管理の効率と信頼性を高めることができました。

② A0040A 光雑音アナライザ 

A0040A 光雑音(ノイズ)アナライザは、レーザーの光周波数ノイズスペクトル密度を評価する業界初のソリューションです。

デジタルコヒーレント伝送システムやCPOで使用されるレーザーの1/fノイズ、ホワイトノイズ、およびローレンツ帯域幅を分析します。ITLA開発に必要なディザやEMIによるスプリアスノイズを検出可能です。基準レーザ光源や周波数調整が不要のため、測定は簡単で安定かつ高速です。

主な機能

  • 光周波数ノイズを電力スペクトル密度として測定
  • 1/fノイズ、ホワイトノイズ、およびローレンツ帯域幅の分析
  • 1 kHz未満の帯域幅測定における高感度
  • 従来の遅延型セルフヘテロダイン干渉計の機能を内蔵

導入事例

デジタルコヒーレントトランシーバー製造メーカー様:「EMIの影響を正確に捉え、設計改善でノイズを大幅に抑制」
電子回路から発生するEMIが、線幅性能に影響していることは把握していましたが、具体的な影響範囲までは見えていませんでした。
A0040Aの線幅スペクトル解析を活用することで、EMIの発生源を特定し、回路と実装の見直しを実施。結果として、狭い線幅特性を保ったまま、当社製品の市場投入までの時間も短縮できました。

まとめ:レーザー干渉計による高精度測定の仕組みを理解し、自社に最適な製品の導入を

レーザー干渉計は、微小な変位や距離を高精度かつ非接触で測定できる優れた技術です。今後も、レーザー干渉計の多様な分野での応用と技術の進化が期待されています。

光通信と光センシング分野においては、SYCATUSの「A0020A レーザー線幅測定システム」や「A0040A 光雑音アナライザ」、「A0070A 光周波数アナライザ」などのレーザー干渉計技術を用いた測定器の活用により、測定の信頼性や設計効率の向上が実現可能です。

各種測定ソリューションや当社の製品について、ご興味がおありの企業様は、お気軽にお問い合わせください。

製品について、お気軽にお問い合わせください。

SYCATUSは、光通信と光センシング分野における測定の先駆者として、20年以上にわたり、測定のためのハードウェアとソフトウェアの統合システムを提供してきました。

これからも、専門性、独自性、正確性を基軸として開発された革新的な光計測技術を、全世界に発信してまいります。

また弊社では、光測定に関する様々な疑問やシステム機器の導入に関するお悩みに対して、専門的なアドバイスを提供しています。

弊社の専門スタッフが、光測定に関するさまざまな問題の解決をお手伝いをさせていただきます。